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【完全版】湊かなえ ファンが全作品をまとめて徹底評価・レビューしてみた

本を握りしめる少女

ーイヤミスの女王ー

この言葉を耳にしたとき思い浮かぶ者は、
おそらく一人しかいないのではないでしょうか。

そう、湊かなえです。

今回は、彼女の総集編として、

 
  • プロフィールを紹介
  • 全作品を時系列毎に紹介
  • おすすめ度/イヤミス度を分析
  • それぞれの本のポイントや見どころをレクチャー

とった内容でお伝えしていきます。

それでは早速、湊ワールドに参りましょう。

湊かなえのプロフィール

生年月日1973年(昭和48年)生まれ
出身地広島県因島市 中庄町
(現・尾道市因島中庄町)
累計売上部数300万部超

2008年の「告白」で衝撃のデビューを果たした湊かなえ。

彼女は、大学卒業後アパレルメーカーに就職して1年半勤務の後、1996年〜1998年(23~25歳)の2年間は青年海外協力隊隊員としてトンガに赴任、家庭科教師として栄養指導に携わるという変わった経歴の持ち主なんです。

帰国後は家庭科の非常勤講師となり、2000年(27歳)に結婚します。
2001年(28歳)に第一子を出産。

その後「何か新しいこと」にチャレンジしたいと川柳や脚本に挑戦します。

その中で紆余曲折もあり、やがて小説家を志すようになります。
「告白」から始まり「イヤミスの女王」として才能を開花させた彼女は、今でも毎年のように作品を生み出しヒット作を連発している有名な女流小説家です。

詳しくはWikipediaをご覧ください。

Q,イヤミスとは?
ミステリー小説の枠組みの一種で、事件だけではなく、人間の奥に潜む黒い心理に着目しています。見たくないと思いながらも読み進めてしまう人間の特性をついた内容で、読後感が 「嫌な気分」になる小説のことをいいます

 

1.告白(2008年)

 
ヒトコト

そして、みんな不幸になる。

発行所双葉社
発行日2008年8月5日
ページ数268ページ
実写化映画化(2010)
イヤミス度10/10
おすすめ度10/10

本作は、見る者全てを不快にさせる最低で最高な作品です。
湊かなえの処女作でありながら「湊かなえ=イヤミスの女王」と位置付ることとなる人気作品で、はじめから異才を放っていたということがわかります。

この作品には「悪」の概念という壮大なテーマがあります。
誰もが持つ潜在意識に潜んだ「悪」という存在は、きっかけ一つあれば成長を繰り返します。
そしてそれが表に出る頃には、手が付けられないほどの悪の形に昇華させてしまっていて、とんでもない事件を引き起こします。

ただ本書では、
加害者である「彼らも」被害者である。ー
ということが、ヒシヒシと伝わってくるのも事実でとても考えさせられます。

なぜなら、そうなる前に気付いてあげられなかった。
いや、気付こうともしなかった親や先生。そしてクラスメイトや人間関係の悪い影響。。。。
といったような不遇な環境に未成熟な子どもがさらされてなお、助け舟が無いとなると、本来あるべき姿とは180度変わったものになってしまうのは当然だからです。

こうした点をふまえて読み進めていくと、ぼくたちの世の中にもそれと似た、悲しい現実と重なるものがあります。
ちなみに、描かれている人物で良い人は一人も出てきません。逆にお見事としか言えません。

湊かなえを知るにはまず最初に見るべき作品です。

2.少女(2009年)

 
ヒトコト

思春期の少女から視る「自殺」「友情」「いじめ」「家族」そして「死」

発行所早川書房
発行日2009年1月20日
ページ数279ページ
実写化映画化(2016)
イヤミス度4/10
おすすめ度6/10

読み始めは、文章からどちらの発言なのかいちいち読み取るのに苦戦しましたが、途中からふたりの人物像がはっきり見えてきたので、イッキに臨場感のある作品になりました。

学生時代なら誰しもが経験するであろう「自分たちのいる場所=世界の全て」という感覚。
10代独特のグラグラとした危なっかしさと無垢なる残酷さが等身大で描かれているのが絶妙でよかったです。

とくに、彼女らの狭い世界の中で複雑に絡み合う人間関係は必見です
序盤に蒔かれた謎やトリックは、後半にかけて次々と回収されて最終的にはすべてのピースが埋まるのですっきりします。イヤミス度は案外低め。

その後のふたりは因果応報の報いを受けるかもしれませんが、それはまた別の物語。

3.贖罪(2009年)

 
ヒトコト

罪と罰。

発行所東京創元社
発行日2009年6月15日
ページ数253ページ
実写化ドラマ化(2012)
イヤミス度8/10
おすすめ度6/10

「贖罪」は、米ミステリー小説界で最高の栄誉『エドガー賞』にノミネートされた作品です。

本作品は、ミステリー小説でありながら、伏線やどんでん返しが少ない作品と言われていますが、そもそもそれらを目的として書いた本ではないという事を前提知識としておさえておくことは重要です。

そこで、本作品を読むにあたり意識する点を3つほど挙げておきます。

罪に対する向き合い方
・過去の罪は一生消えないという常世の摂理とは?

理不尽なまでに罪悪感を抱き続けた少女たちの将来の末路

これらに着目して読んでいくとこの作品の世界観はより深まるでしょう。

さあ、あなたはパンドラの箱を開きますか?
はい←
いいえ

4.Nのために(2010年)

 
ヒトコト

あなたは「どのN」から物語を眺めますか?

発行所東京創元社
発行日2010年1月29日
ページ数246ページ
実写化ドラマ化(2014)
イヤミス度5/10
おすすめ度7/10

ザックリと説明すると
「放火、殺人に巻き込まれた男女4人の物語」というテーマが表設定。
真の愛と罪の共有」というテーマが裏設定でホントのテーマ。
そんなミステリー小説。

タイトルでもある「Nのために」のNはイニシャルですが、いったいNとは誰なのか。
そう、本作品では「N」がつく人物が複数登場します。
どの「N」の視点で物語を読むかによって結末の印象がガラリと変わります。
このようなギミックは、ミステリー作品らしい嗜好を凝らした作品といえます。

もう一つ特筆すべきは、湊かなえでは珍しい「愛」をテーマにした作品であるということです。
ここに関しては、湊かなえを知っている読者にとって新鮮な気分を味わえる要素です。

ただし、忘れないでください。
彼女が「イヤミスの女王」だということを。(笑)

5.夜行観覧車(2010年)

 
ヒトコト

リアルな「不幸な家庭」を追体験できる小説

発行所 双葉社
発行日 2010年6月2日
ページ数 336ページ
実写化ドラマ化(2013)
イヤミス度8/10
おすすめ度7/10

高級住宅地で起こる殺人事件。
生活レベルも高く、教養が高い人間が住むこの街で殺人が起こる…。

湊かなえワールドが全開の不幸度が高い作品です。
人間の化けの皮を剥いだような登場人物で溢れています。
その人物たちの”ヨゴレ”はどれも違う類の”ヨゴレ”なのがみどころ。
彼ら、彼女らが不協和音を起こしている世界観は、なんとも言い難い不快感です。

内容としては、実際にありえるだろうなという事件。
いや、世界を見渡せば毎日似たような事件が起きているでしょう。
それだけに、リアルな臨場感が伝わり、強い寒気を感じる作品です。

生活レベルと現実のギャップ。
親の期待と子どもの意思のギャップ。
小さなズレはやがて大きな歪みを生み、キリキリと嫌な音を立てる、、、。
そうなる前に、痛みを共有してバランスを取り持つのも、人間の役目だと感じました。

6.往復書簡(2010年)

 
ヒトコト

手紙を交わす毎に見える真実に目が離せない。。。

発行所幻冬舎
発行日2010年9月21日
ページ数265 ページ
実写化ドラマ化(2016)
イヤミス度2/10
おすすめ度9/10

書簡形式の連作ミステリー小説という形をとっていて、手紙のやり取りを通じて過去の事件の真相が明らかになっていくという構成です。

現代のようなメールや電話での連絡手段ではなく、コミュニケーションに時間の掛かる手紙でのやり取りという設定が新鮮でよかったです。

手紙の特性もあいまって、じっくり文章の中身を考える時間があることから、読者も一緒に思考を巡らせて推理できるような作りが楽しめました。
そして、次第に明かされる事実の過程が実に見事でした。

本作品では珍しく、登場人物には憎たらしい人物がほとんど出てこないという特徴があります。
湊かなえの代名詞である「イヤミス」感はなく、読後感はわりとすっきりとした気分に彼女の新しい一面を見ることのできる貴重な一冊です。

7.花の鎖(2011年)

 
ヒトコト

Kと三人の女。

あらすじ

両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花。職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。驚きのラストが胸を打つ、感動の傑作ミステリ。

発行所 文藝春秋
発行日 2011年3月10日
ページ数296ページ
実写化ドラマ化(2013)
イヤミス度4/10
おすすめ度6/10

一見相関性がないと思われていた三人の女性の三つの物語
それぞれに生きた時代の違いがあり、これらがどう繋がるのかというところが見どころです。
最終章にはすっきりとパズルがハマるミステリー小説です。

登場人物ごとに視点がガラッと変わる作風は、作者が得意とする技法で今回もうまく活かされています。時空を超えた美しくも儚い物語、そして罪の連鎖をお見逃しなく

この作品のキーワードはズバリ「きんつば」です☆(笑)

8.境遇(2011年)

 
ヒトコト

本で読むドラマ。略して「読むドラ」

発行所双葉社
発行日2011年10月7日
ページ数244 ページ
実写化ドラマ化(2011)
イヤミス度2/10
おすすめ度5/10

湊かなえ作品なので腹をくくって、「どこからイヤミス展開来るのかな」と今回も気構えていましたが、どうやらこの作品は感動系よりで、少々驚きつつもウルっとさせていただきました。

イヤミス展開が来ないということで、
「湊かなえの作品はなんだか怖くて読めない」
と食わず嫌いしている方におすすめできる作品
です。

この作品では、主人公の息子が誘拐されますが、重要なのは誘拐されたことではなくその理由。
そこに本作品において、すべてのドラマが詰まっています。
上記を把握した上で着目するべき点を間違えなければ初見でも十二分に楽しめます。

巻末の絵本「あおぞらリボン」の絵のタッチがいいかんじ。

9.サファイア(2012年)

 
ヒトコト

あなただけの宝石…。

発行所角川春樹事務所
発行日2012年4月12日
ページ数328ページ
実写化一部ドラマ化(2016)
イヤミス度5/10
おすすめ度8/10

ヒトとの切ない出逢いと別れ。己の罪悪。愛と夢をそれぞれに描いた傑作短篇集です。
7種類の宝石をテーマにしており、それぞれの物語が描かれています

短編集とは思えないほど一話一話の中身が濃いストーリー展開で、非常に満足度の高い一冊です。
真っ暗な闇の中からたまに顔を覗かせる優しさと愛が、なんともいとおしい気分にさせてくれます。

好きな作品は人によって変わるのがこの短編集のいいところ。
どの作品も後味が違っていて豪華なオードブルを食しているかのよう。
ぼくは「サファイア」「ガーネット」(このふたつは連作)「ムーンストーン」がだいすきです。

ラストは圧巻で、読者泣かせの感動ラストです。

 

10.白ゆき姫殺人事件(2012年)

 
ヒトコト

ネット炎上?口コミ?現代風ミステリー小説。

あらすじ

化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。

発行所集英社
発行日2012年7月26日
ページ数277ページ
実写化映画化(2014)
イヤミス度6/10
おすすめ度6/10

ネットやゴシップで出回る無責任な人の「噂」というものはいつもひとり歩きして増幅する。
それを思考停止状態で面白がる、わたしたち人間の本質をついた作品です。

最後の最後まで真犯人が読めないところもよく、のめり込めます。
内容の切り口はインタビュー形式、SNSを取り入れた構成と当時では新しい手法を採用していて「こんな本の書き方もあるのか」という感心と新鮮さを覚えました。

2012年の作品ですが、現代でも相通じる風刺が多くて楽しめす。

11.母性(2012年)

 
ヒトコト

すれ違いの愛情からは”歪み”しか生まれない。

あらすじ

女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。…遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも―。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語。

発行所新潮社
発行日2012年10月30日
ページ数266ページ
実写化
イヤミス度9/10
おすすめ度7/10

母親の手記と娘の回想で話は初めからドロドロと進んでいきます。
自分の実の娘を愛せず実の母親を愛しすぎた女と、女から愛されない娘。
どちらも決して繋がることのない心のありようがしっかりと描かれていて苦しかったです。

主人公の女は「母性がない」わけではなく、それ以上にまだ子どもでいたい気持ち、親という存在に守られたいという依存心を拭えないまま親になったのだなと感じます。

そんな「子どものままの母親」は、自分の子どもとは本心で向き合えず、本当の愛情も興味も寄せられない、、、そんな悲しい現実を突きつけられることで、他者に依存するということの恐ろしさを痛感しました。

狂った家族の価値観というものは、まさにイヤミスにもってこいの題材でした。

12.望郷(2013年)

 
ヒトコト

島に戻りたくても戻れないヒト、島を忘れたいのに引き戻されるヒト。

あらすじ

暗い海に青く輝いた星のような光。母と二人で暮らす幼い私の前に現れて世話を焼いてくれた“おっさん”が海に出現させた不思議な光。そして今、私は彼の心の中にあった秘密を知る…日本推理作家協会賞受賞作「海の星」他、島に生まれた人たちの島への愛と憎しみが生む謎を、名手が万感の思いを込めて描く。

発行所文藝春秋
発行日2013年1月30日
ページ数264ページ
実写化ドラマ化(2016)/ 映画化(2017)
イヤミス度3/10
おすすめ度7/10

6作品が収録されている短編集になります。
それぞれの話に繋がりはありませんが、全て瀬戸内海に浮かぶ白綱島(しらつなじま)という島が関わる話になっています。

島が舞台ということで、閉鎖的な空間の中での独特な気質や価値観が感じられる作品です。
内容は、一つの島の物語で起こる出来事なので、脳内イメージに一貫性を保つことができて非常に読みやすかったです。
暗く切ない話が多めですが、ラストはちょっぴり優しい気持ちになるような構成になっていて、読後感も悪くなかったです。

いつもとはまた違った作風で、イヤミス感は控えめ。
彼女のイヤミス作品が苦手な方でも楽しめるでしょう。

13.高校入試(2013年)

 
ヒトコト

入試をぶっつぶす! ←パワーワードw

あらすじ

県下有数の公立進学校・橘第一高校の入試前日。新任教師・春山杏子は教室の黒板に「入試をぶっつぶす! 」と書かれた貼り紙を見つける。迎えた入試当日。試験内容がネット掲示板に次々と実況中継されていく。遅れる学校側の対応、保護者からの糾弾、受験生たちの疑心。杏子たち教員が事件解明のため奔走するが……。

発行所角川春樹事務所
発行日 2013年1月10日
ページ数383ページ
実写化本人脚本・ドラマ化(2012)
イヤミス度4/10
おすすめ度5/10

「高校入試」は学園モノミステリーでドラマ先行のノベライズ作品です。
ドラマ先行ということもあり、小説でも会話中心になっていて、登場人物が多くて覚えるのが大変ですが、それは人物相関図のページがあるのでなんとかなります。

湊かなえの一人称切り替え技法はこの作品にも反映されているので、一つの問題をさまざまな角度から見られるのが楽しいです。
そして、一人称がコロコロ変わるがゆえに、犯人が見えづらく、疑心暗鬼になるように作られているのが巧妙でした。

物語の主旨はとてもわかりやすいので、最後までしっかりと腰を据えて推理を楽しめます。
ドラマが先行したせいもあってなのか、読後のイヤミス感は控えめです。

14.豆の上で眠る(2014年)

 
ヒトコト

わたしのおねえちゃんをどこにかくしたの?

あらすじ

小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉・万佑子が失踪した。スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。喜ぶ家族の中で、しかし自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。―お姉ちゃん、あなたは本物なの?辿り着いた真実に足元から頽れる衝撃の姉妹ミステリー。

発行所新潮社
発行日2014年3月28日
ページ数275ページ
実写化
イヤミス度6/10
おすすめ度8/10


親子や姉妹の「キズナ」と「ホント」について言及した作品です。

「姉の失踪」というミステリーではありがちな展開ではじまりますが、読み進めていくとそんなことを忘れてしまうほどに新しい、新しい、新しい展開が胸のざわつきを抑えられません。

「豆の上で眠る」というタイトルのように、居心地の悪さや歯がゆさを終始感じさせる作りになっています。特に、中盤から後半にかけての不気味具合は狂気を感じます。

ラストはめちゃくちゃ衝撃を受けたのと同時に、主人公の「その後」の空想にふけってしまいます。個人的に大好きな作品です。

15.山女日記(2014年)

 
ヒトコト

湊かなえという人間性を紐解く

あらすじ

こんなはずでなかった結婚。捨て去れない華やいだ過去。拭いきれない姉への劣等感。夫から切り出された別離。いつの間にか心が離れた恋人。…真面目に、正直に、懸命に生きてきた。なのに、なぜ?誰にも言えない思いを抱え、山を登る彼女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。新しい景色が背中を押してくれる、感動の連作長篇。

発行所幻冬舎
発行日2014年7月10日
ページ数292ページ
実写化ドラマ化(2017)
イヤミス度1/10
おすすめ度5/10

湊かなえのある意味での衝撃作。
なんと、今回はミステリーとイヤミスを完全封印しています。

各章の登場人物が絡まり合いながらたどり着くゴールはスッキリとしています。
シンプルに山の良さと、著者が生み出す質の高い文章は、山頂にたどり着いたような清々しさを感じるような読後感を味わえます。

著者は登山好きというだけあって、登山工程の描写が非常に忠実に再現されていて、山を登る魅力がじゅうぶんに伝わった一冊でした。山好きにも山の魅力を知らない方にも読んでほしい一冊。

16.物語のおわり(2014年)

 
ヒトコト

終わりははじまり。はじまりは終わり。

あらすじ

病の宣告、就職内定後の不安、子どもの反発…様々な悩みを抱え、彼らは北海道へひとり旅をする。その旅の途中で手渡された紙の束、それは「空の彼方」という結末の書かれていない小説だった。そして本当の結末とは。あなたの「今」を動かす、力強い物語。

発行所朝日新聞出版
発行日2014年10月7日
ページ数296ページ
実写化
イヤミス度1/10
おすすめ度8/10

~ひとつの物語~
それを語るには余りに永く、余りに短い。
北海道を出発点とし、未完成の小説が悩みをかかえた人たちへバトンとして渡されていく。
それを読んだ人々は心を動かし、人生を大きく変えようとしていきます。

本作品は連作短篇でありながら、すべてに繋がりがある話なので、短編特有の浅さを一切感じさせない深みのある作りに仕上がっています。
個々の人物の命の吹き込み方も天才的で、人の心の底を文字で表現する能力は相変わらず流石としかいいようがありません。

どの物語も「あえて完結させない」形をとっており、結末は読者の想像に委ねられます。
そして、あなた自身の物語も「ハムさんと私」をきっかけに動き出したはずです。
登場人物の運命は読者の心のありようによって大きく変わるという面白い作風でした。

17.絶唱(2015年)

 
ヒトコト

ノンフィクションなフィクション。湊かなえのルーツを感じる。

あらすじ

心を取り戻すために、約束を果たすために、逃げ出すために。忘れられないあの日のために。別れを受け止めるために。「死」に打ちのめされた彼女たちが秘密を抱えたまま辿りついた場所は、太平洋に浮かぶ島―。喪失と再生。これは、人生の物語。

発行所新潮社
発行日2015年1月22日
ページ数249ページ
実写化
イヤミス度5/10
おすすめ度7/10

阪神淡路大震災で傷付いた心をトンガの国で癒す4人の女性の物語です。
この作品は、著者の実体験が深く関わっています。
というのも、湊かなえは1995年に起きた大震災の翌年に、青年海外協力隊でトンガに赴任していたという経歴の持ち主であるからです。

この予備知識をもった上でもう一度本を手に取ると印象がガラリと変わります。
湊かなえ自身のリアルなココロと生暖かい息遣いが聞こえてきそうな生きた作品です。

彼女は、表現しがたい罪悪感というものをずっと背負ってきていたのだと思います。
それが過去のさまざまな作品に反映されていたのは間違いないというのも感じます。
そして、当時の内容を振り返るとも思われる小説をついに解禁した彼女の勇気は凄まじいもので、それらを考えた上でよむと涙が止まらなかったです。

彼女の作品をたくさん読んできた人にこそ読んでもらいたい一冊です。

18.リバース(2015年)

 
ヒトコト

温かいコーヒーとともにどうぞ。

あらすじ

深瀬和久は平凡なサラリーマン。自宅の近所にある“クローバー・コーヒー”に通うことが唯一の楽しみだ。そんな穏やかな生活が、越智美穂子との出会いにより華やぎ始める。ある日、彼女のもとへ『深瀬和久は人殺しだ』と書かれた告発文が届く。深瀬は懊悩する。遂にあのことを打ち明ける時がきたのか―と。

発行所 講談社
発行日 2015年5月19日
ページ数280ページ
実写化ドラマ化(2017)
イヤミス度8/10
おすすめ度9/10

湊かなえ作品では珍しい、男性が主人公と言うこともあって新鮮で読み応えのある作品となりました。

ミステリーの要素以上に、エゴイズムや嫉妬心と人間の優しさ、気遣いなど、ヒトの善悪の感情を自然に物語の中で落とし込めるのは相変わらずの素晴らしさです。
最後のどんでん返しの落差が半端なくで衝撃が走りました。
リバース=逆転とはよくいったものだなと。


本作は、推理小説的な側面もあり、想像を膨らませながら読める楽しさ。
結局、誰が正しくて誰が悪かったのか、何をどうすべきだったのかなどの倫理観も問われる作品に仕上がっております。

湊かなえ久々のイヤミス作品。

19.ユートピア(2015年)

 
ヒトコト

ユートピアのコインの裏はディストピア。

あらすじ

太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。先祖代々からの住人と新たな入居者が混在するその町で生まれ育った久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っている。一方、陶芸家のすみれは、久美香を広告塔に車椅子利用者を支援するブランドの立ち上げを思いつく。出だしは上々だったが、ある噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂い始め―。緊迫の心理ミステリー。

発行所集英社
発行日2015年11月26日
ページ数320ページ
実写化
イヤミス度7/10
おすすめ度5/10

ドロドロとした人間関係というよりは、リアルな人間関係が丁寧に描かれた作品です。
とくに善人と悪人の境界線の描き方が素晴らしいと思いました。

人間は、ユートピアを求めてディストピアへ向かっている、、、
その過程で起きる必然の不運を、他人のせいにして足を引っ張り合う、、、
小さないざこざは取返しのつかないほどに大きくなりやがて爆発する、、、。

このような大人よりも、よっぽど子どものほうが正しい答えを導き出す力があると思わせられた作品でした。

20.ポイズンドーター・ホーリーマザー(2016年)

 
ヒトコト

毒娘と聖母

あらすじ

女優の弓香の元に、かつての同級生・理穂から届いた故郷での同窓会の誘い。欠席を表明したのは、今も変わらず抑圧的な母親に会いたくなかったからだ。だが、理穂とメールで連絡を取るうちに思いがけぬ訃報を聞き…。(「ポイズンドーター」)母と娘、姉と妹、友だち、男と女。善意と正しさの掛け違いが、眼前の光景を鮮やかに反転させる。名手のエッセンスが全編に満ちた極上の傑作集!

発行所光文社
発行日2016年5月17日
ページ数245ページ
実写化ドラマ化(2019)
イヤミス度7/10
おすすめ度8/10

母という唯一無二の存在は、また唯一無二の存在である子に愛情を惜しみなく注ぎます。
それゆえに、子供のために良かれと思ってひとこと。またひとこと。
結局「こどものため」という免罪符を使って、親は子どもに遠慮のかけらもない自我をぶつけています。

今回は、そんな繊細でリアルな母娘問題を正面から切り込んだ内容となっています
娘は母の毒を吸い込んでポイズンドーターに。
母は娘の無垢なココロを吸い込んでホーリーマザーに。

この話の根底は、複雑な親子の愛。
どのような幸せな家庭にもちょっとしたことがきっかけで本書のような魔の手が降り注ぐ危険性を帯びているということを反面教師として学ぶことができる作品です。

21.未来(2018年)

 
ヒトコト

湊かなえ作品史上最高峰の畜生が登場します。

あらすじ

「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」ある日、突然届いた一通の手紙。
送り主は未来の自分だという……。『告白』から10年、湊ワーールドの集大成!
待望の書き下ろし長編ミステリー!!

発行所双葉社
発行日 2018年5月19日
ページ数448ページ
実写化
イヤミス度10/10
おすすめ度6/10

金の箔押しで「未来」というタイトルが輝かしい未来を連想してしまいますが、決して騙されることなかれ。著者は湊かなえであるということを忘れてませんか。
ひさびさのイヤミスMAXな作品です。

最初は未来へ向かって邁進するさまが描写されていくが、ある一つのできごとをきっかけに、現実が完成目前に倒れるドミノ崩しのように絶望てきな連鎖を生み出していきます。
DVや近親相姦、親殺しの計画と実行、自殺や公務員がAV出演の過去などのネガティブワードが分厚いページにわたって続きます。

明るい未来に好転する展開を願ってめくるスピードは速まりますが、事態は一向に変わらず。
失ったものの方が明らかに多いものの、今後の展開には「未来」が切り開かれていくのではないかという淡い期待を抱かせるような描写があってよかったです。
いや、全然よくないんですけどそれまでの不幸と比べたらってことです(蛇足ですみません)

もう一度本を開くのに勇気がいる一冊でもある。
精神がじゅうぶん鍛えられている人におすすめします。

22.ブロードキャスト(2018年)

 
ヒトコト

学生時代をブロードキャストする。

あらすじ

町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。その後、陸上の強豪校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、制作の方向性を巡って部内で対立が勃発してしまう。果たして圭祐は、新たな「夢」を見つけられるか―。

発行所角川春樹事務所
発行日2018年8月23日
ページ数312ページ
実写化
イヤミス度2/10
おすすめ度8/10

前回の「未来」で毒を吐き切ったのか、湊かなえ作品と疑ってしまうほどのさわやかな青春小説。

陸上競技で悔しい思いや挫折を味わった主人公がひょんなことをきっかけに放送部に入部します。そこで起きる、かつての部活仲間や顧問との関係、クラスでのいじめ、部活内の人間模様など、リアルな学校生活を描く学園モノを湊かなえ風に仕上げたという内容。
自分の過去に真正面から立ち向かい、やがて過去と仲直りをするような話で温かい気持ちになります。

僕は、湊かなえのイヤミスが好きというより、湊かなえの文章が好きなのでこれはこれですごく楽しめました。

23.落日(2019年)

 
ヒトコト

過去から逃げる理由は無くなった。

あらすじ

新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語。

発行所 角川春樹事務所
発行日 2019年9月3日
ページ数380ページ
実写化
イヤミス度3/10
おすすめ度7/10

新人脚本家である主人公の故郷で起きた殺人事件に、主人公と映画監督の2人の側面から関わり、真相をつかもうとするミステリー物語です。

彼女は事件の件で距離をとっていた故郷に、作品作りを通して再び密接に絡むこととなります。
ずっと避けてきた過去、誰にも触れられたくない記憶が浮き彫りになっていくサマを描く描写は、リアルな女性の心をしっかりと捉えていたと思います。

こうしたきっかけを通して、いままで明るみに出ることのなかった新発見がつぎつぎと見つかるところは大注目です。序盤からたくさんの伏線や謎がばらまかれますが、後半につれて丁寧に回収されていきます。

終わり方も希望という光が差し込んだような清々しい終わり方で、読後感はすっきりでした。


いかがだったでしょうか。

「イヤミスの女王」とは言われていますが、彼女の魅力はそれだけではないということはファンの間ではもう周知の事実です。
湊かなえの作品は、情緒的で人間のウラガワを映し出すのが非常に巧みで、それでいて美しいです。

彼女を知らない方には魅力が少しでも伝わったのであれば、この記事は大成功です。
彼女の作品を知っている方も、時系列で読んでみると成長が垣間見えたりして、面白い発見があると思います。

僕自身、これからも一ファンとして読者の心を掻き乱す作品、繊細で美しい表現力を期待しながら、今回の記事の執筆を終えようと思います。

それではまた。

この記事では、湊かなえの最新作が出版され次第、ただちに管理人が購入し、情報とレビューを公開しています。なのでブックマークをおすすめしています。

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Shohei Obata
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