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【完全版】湊かなえ ファンが全作品をまとめて徹底評価・レビューしてみた

【完全版】湊かなえ ファンが全作品をまとめて徹底評価・レビューしてみた

ーイヤミスの女王ー

この言葉を耳にしたとき思い浮かぶ者は、
おそらく一人しかいないのではないでしょうか。

そう、湊かなえです。

今回は、彼女の総集編として、

 
  • プロフィールを紹介
  • 全作品を時系列毎に紹介
  • おすすめ度/イヤミス度を分析
  • それぞれの本のポイントや見どころをレクチャー

とった内容でお伝えしていきます。

それでは早速、湊ワールドに参りましょう。

湊かなえのプロフィール

生年月日1973年(昭和48年)生まれ
出身地広島県因島市 中庄町
(現・尾道市因島中庄町)
累計売上部数300万部超

2008年の「告白」で衝撃のデビューを果たした湊かなえ。

彼女は、大学卒業後アパレルメーカーに就職して1年半勤務の後、1996年〜1998年(23~25歳)の2年間は青年海外協力隊隊員としてトンガに赴任、家庭科教師として栄養指導に携わるという変わった経歴の持ち主なんです。

帰国後は家庭科の非常勤講師となり、2000年(27歳)に結婚します。
2001年(28歳)に第一子を出産。

その後「何か新しいこと」にチャレンジしたいと川柳や脚本に挑戦します。

その中で紆余曲折もあり、やがて小説家を志すようになります。
「告白」から始まり「イヤミスの女王」として才能を開花させた彼女は、今でも毎年のように作品を生み出しヒット作を連発している有名な女流小説家です。

詳しくはWikipediaをご覧ください。

Q,イヤミスとは?
ミステリー小説の枠組みの一種で、事件だけではなく、人間の奥に潜む黒い心理に着目しています。見たくないと思いながらも読み進めてしまう人間の特性をついた内容で、読後感が 「嫌な気分」になる小説のことをいいます

 

1.告白(2008年)

 
ヒトコト

そして、みんな不幸になる。

発行所双葉社
発行日2008年8月5日
ページ数268ページ
実写化映画化(2010)
イヤミス度10/10
おすすめ度10/10

本作は、見る者全てを不快にさせる最低で最高な作品です。
湊かなえの処女作でありながら「湊かなえ=イヤミスの女王」と位置付ることとなる人気作品で、はじめから異才を放っていたということがわかります。

この作品には「悪」の概念という壮大なテーマがあります。
誰もが持つ潜在意識に潜んだ「悪」という存在は、きっかけ一つあれば成長を繰り返します。
そしてそれが表に出る頃には、手が付けられないほどの悪の形に昇華させてしまっていて、とんでもない事件を引き起こします。

ただ本書では、
加害者である「彼らも」被害者である。ー
ということが、ヒシヒシと伝わってくるのも事実でとても考えさせられます。

なぜなら、そうなる前に気付いてあげられなかった。
いや、気付こうともしなかった親や先生。そしてクラスメイトや人間関係の悪い影響。。。。
といったような不遇な環境に未成熟な子どもがさらされてなお、助け舟が無いとなると、本来あるべき姿とは180度変わったものになってしまうのは当然だからです。

こうした点をふまえて読み進めていくと、ぼくたちの世の中にもそれと似た、悲しい現実と重なるものがあります。
ちなみに、描かれている人物で良い人は一人も出てきません。逆にお見事としか言えません。

湊かなえを知るにはまず最初に見るべき作品です。

2.少女(2009年)

 
ヒトコト

思春期の少女から視る「自殺」「友情」「いじめ」「家族」そして「死」

発行所早川書房
発行日2009年1月20日
ページ数279ページ
実写化映画化(2016)
イヤミス度4/10
おすすめ度6/10

読み始めは、文章からどちらの発言なのかいちいち読み取るのに苦戦しましたが、途中からふたりの人物像がはっきり見えてきたので、イッキに臨場感のある作品になりました。

学生時代なら誰しもが経験するであろう「自分たちのいる場所=世界の全て」という感覚。
10代独特のグラグラとした危なっかしさと無垢なる残酷さが等身大で描かれているのが絶妙でよかったです。

とくに、彼女らの狭い世界の中で複雑に絡み合う人間関係は必見です
序盤に蒔かれた謎やトリックは、後半にかけて次々と回収されて最終的にはすべてのピースが埋まるのですっきりします。イヤミス度は案外低め。

その後のふたりは因果応報の報いを受けるかもしれませんが、それはまた別の物語。

3.贖罪(2009年)

 
ヒトコト

罪と罰。

発行所東京創元社
発行日2009年6月15日
ページ数253ページ
実写化ドラマ化(2012)
イヤミス度8/10
おすすめ度6/10

「贖罪」は、米ミステリー小説界で最高の栄誉『エドガー賞』にノミネートされた作品です。

本作品は、ミステリー小説でありながら、伏線やどんでん返しが少ない作品と言われていますが、そもそもそれらを目的として書いた本ではないという事を前提知識としておさえておくことは重要です。

そこで、本作品を読むにあたり意識する点を3つほど挙げておきます。

罪に対する向き合い方
・過去の罪は一生消えないという常世の摂理とは?

理不尽なまでに罪悪感を抱き続けた少女たちの将来の末路

これらに着目して読んでいくとこの作品の世界観はより深まるでしょう。

さあ、あなたはパンドラの箱を開きますか?
はい←
いいえ

4.Nのために(2010年)

 
ヒトコト

あなたは「どのN」から物語を眺めますか?

発行所東京創元社
発行日2010年1月29日
ページ数246ページ
実写化ドラマ化(2014)
イヤミス度5/10
おすすめ度7/10

ザックリと説明すると
「放火、殺人に巻き込まれた男女4人の物語」というテーマが表設定。
真の愛と罪の共有」というテーマが裏設定でホントのテーマ。
そんなミステリー小説。

タイトルでもある「Nのために」のNはイニシャルですが、いったいNとは誰なのか。
そう、本作品では「N」がつく人物が複数登場します。
どの「N」の視点で物語を読むかによって結末の印象がガラリと変わります。
このようなギミックは、ミステリー作品らしい嗜好を凝らした作品といえます。

もう一つ特筆すべきは、湊かなえでは珍しい「愛」をテーマにした作品であるということです。
ここに関しては、湊かなえを知っている読者にとって新鮮な気分を味わえる要素です。

ただし、忘れないでください。
彼女が「イヤミスの女王」だということを。(笑)

5.夜行観覧車(2010年)

 
ヒトコト

リアルな「不幸な家庭」を追体験できる小説

発行所 双葉社
発行日 2010年6月2日
ページ数 336ページ
実写化ドラマ化(2013)
イヤミス度8/10
おすすめ度7/10

高級住宅地で起こる殺人事件。
生活レベルも高く、教養が高い人間が住むこの街で殺人が起こる…。

湊かなえワールドが全開の不幸度が高い作品です。
人間の化けの皮を剥いだような登場人物で溢れています。
その人物たちの”ヨゴレ”はどれも違う類の”ヨゴレ”なのがみどころ。
彼ら、彼女らが不協和音を起こしている世界観は、なんとも言い難い不快感です。

内容としては、実際にありえるだろうなという事件。
いや、世界を見渡せば毎日似たような事件が起きているでしょう。
それだけに、リアルな臨場感が伝わり、強い寒気を感じる作品です。

生活レベルと現実のギャップ。
親の期待と子どもの意思のギャップ。
小さなズレはやがて大きな歪みを生み、キリキリと嫌な音を立てる、、、。
そうなる前に、痛みを共有してバランスを取り持つのも、人間の役目だと感じました。

6.往復書簡(2010年)

 
ヒトコト

手紙を交わす毎に見える真実に目が離せない。。。

発行所幻冬舎
発行日2010年9月21日
ページ数265 ページ
実写化ドラマ化(2016)
イヤミス度2/10
おすすめ度9/10

書簡形式の連作ミステリー小説という形をとっていて、手紙のやり取りを通じて過去の事件の真相が明らかになっていくという構成です。

現代のようなメールや電話での連絡手段ではなく、コミュニケーションに時間の掛かる手紙でのやり取りという設定が新鮮でよかったです。

手紙の特性もあいまって、じっくり文章の中身を考える時間があることから、読者も一緒に思考を巡らせて推理できるような作りが楽しめました。
そして、次第に明かされる事実の過程が実に見事でした。

本作品では珍しく、登場人物には憎たらしい人物がほとんど出てこないという特徴があります。
湊かなえの代名詞である「イヤミス」感はなく、読後感はわりとすっきりとした気分に彼女の新しい一面を見ることのできる貴重な一冊です。

7.花の鎖(2011年)

 
ヒトコト

Kと三人の女。

発行所 文藝春秋
発行日 2011年3月10日
ページ数296ページ
実写化ドラマ化(2013)
イヤミス度4/10
おすすめ度6/10

一見相関性がないと思われていた三人の女性の三つの物語
それぞれに生きた時代の違いがあり、これらがどう繋がるのかというところが見どころです。
最終章にはすっきりとパズルがハマるミステリー小説です。

登場人物ごとに視点がガラッと変わる作風は、作者が得意とする技法で今回もうまく活かされています。時空を超えた美しくも儚い物語、そして罪の連鎖をお見逃しなく

この作品のキーワードはズバリ「きんつば」です☆(笑)

8.境遇(2011年)

 
ヒトコト

本で読むドラマ。略して「読むドラ」